Mas Cal Demoura

マス・カル・デムラ

2004年に32の村が統合しできたコトー・デュ・ラングドック・テラス・デュ・ラルザック。モンペリエの北西にV字状に広がるこのAOCはラングドックのブドウ栽培地としては最北端に位置し、ラルザックのカルスト山地から吹き付ける北風と、夏の間昼夜の気温差が大きく20℃以上にもなるためブドウがゆっくり、じっくりと熟すことができ、複雑なアロマとフレッシュさが賦与されます。この生産地の真価と生産者たちの長年にわたる努力が報われ、2014年6月テラス・デュ・ラルザックはINAO(原産地呼称ワイン委員会)により正式にAOCとして認定されました。2014ヴィンテージから「テラス・デュ・ラルザック」として単独の表記が可能となったのです。
「留まらねばならない」を意味するカル・デムラはオクシタンの言葉。1970年、ラングドックの多くのワイン農家が豊かな生活を求めこの地を出て行ったとき、ジャン・ピエール・ジュリアン(マス・ジュリアンのオリヴィエ・ジュリアンの父)がドメーヌに名づけた名前です。このドメーヌを2004年から継承するのはイザベルとヴァンサン・グマール。彼らは大手会計事務所で主要なポストを務めていましたが、2002年ディジョンの大学で醸造学を学ぶため退職。その後ラングドック・ルシヨンの20以上のドメーヌを見て回った結果、ジャン・ピエールの哲学はもちろんのこと、この素晴らしいテロワールと環境に惹かれ、ジョンキエールの村でワインを造ることを決めたのです。2人はジャン・ピエールとカーヴで共に働き、テロワールやセパージュについて彼から多くを学びました。事実、ワインはテロワールの複雑な味わいが感じられるとともに見事な状態で熟成を遂げるバランスの良さ、高品質で自然な性格をしっかりと受け継いでいるのです。
合計16ヘクタールの畑はジョンキエールの村とその周辺にあり、赤ワイン用のパーセルは全てAOCテラス・デュ・ラルザックに指定されています。赤ワイン用の品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、カリニャン、サンソーで平均樹齢は35年以上、白ワイン用にシュナン・ブラン、グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、ヴィオニエ、ミュスカ、プティ・マンサンで20年以上の平均樹齢。土壌は60%が水はけのよい小石がちの石灰質で、ワインのストラクチャーや余韻の長さ、上品さを表現するのに対し、40%の粘土石灰質土壌は柔らかさや若いうちからでも楽しめるチャーミングな性格を与えています。ラルザックのテロワールの風味を最大限生かすという彼らの哲学とブドウの質の向上を図り、2010年からはビオロジックによる栽培を進めてきました。除草剤はもとより、化学物質から成る農薬は使用していません。2013ヴィンテージよりカリテ・フランスによるビオ認証を取得、2015年からは一部の畑でビオディナミを実践しており、今後さらにワインの表現力は高まっていくはずです。綿密な手作業で行われる畑作業のおかげで収量は既に20-30ヘクトリットルにまで抑えられており、収穫にあたっては各パーセル、セパージュの熟度を日々観察。酸、糖度だけでなくタンニンなどのフェノール類が十分な熟度を持っているか分析し収穫、畑とカーヴの選果台で2度選別を行います。
醸造は極めてナチュラル。セパージュごと、パーセルごとに行い、温度管理されたステンレスタンクで自然酵母のみで醸造、12月には500リットルの大樽(ドゥミ・ミュイと呼ばれる、ラングドックでは伝統的な大きい木樽、一部バリックを使用)に移し替えられます。約一年間の熟成を経て、選別されたキュヴェからブレンドを行い、その後6ヶ月の熟成を重ね安定したワインは、ムーンカレンダーに基づき無清澄・ノンフィルターで瓶詰めされます。